30代になったいまでも読み返してしまう金子みすゞの詩。そのなかでも特におすすめする4つを選んでみた。

    

金子みすゞ(みすず)の詩はせつなくて、どこかもの悲しい。それでいて希望のようなキラキラと光り輝いている何か。

金子みすゞは大正から昭和初期にかけて活躍した詩人。作品を発表していたわずか5年の間で、若き童謡詩人の中の巨星と賞賛されたこと、1930年(昭和5年)に26歳の若さで亡くなったこと、それ以外の、彼女の生涯についてはあまり触れられることはない。

小学校国語の教科書に採用されるくらい、金子みすゞの詩はどれも平易な言葉で綴られている。だけど、ちょっとだけ人生を多く生きている大人は、そこに深い深い意味があるってわかってるんだ。

「大漁」「こだまでしょうか」あと何があるだろうか。どの”ことば”も大切な宝物で、折にふれて読み返す。手元に金子みすゞの作品集があるから、ほんの少し紹介しようと思う。

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こだまでしょうか

金子みすゞ(みすず) 「こだまでしょうか」

“ことば”ってこだまする。こだまして、自分に返ってくる。ことばを口にして、それを最初に聞くのは誰だろう? って考えた。たとえば、嫌なことばを口にすると、すぐにそれが返ってきて自分も嫌な気持ちになる。

ことばって、こだまする。「悲しい、悲しい」と心が痛んでいる人に、「つらいよね。悲しいよね。」と、こだましてあげるだけで、救われる。自分もどこか、救われている。そんな体験あるでしょう?

そうか、ことばってこだまするんだ。ことばって、慰めたり、勇気づけたり、ときに人を傷つけたりもする。だから、たとえば嬉しくなるには、自分にとって嬉しいことばを口にすれば良いのだな。そういう良いことばはこだまして、周囲のひとも幸せにするのだな。そういう、ごくごくあたりまえのことを、金子みすゞの詩は教えてくれる。

悲しいときは、悲しい気持ちをことばにして、嬉しいときも「嬉しいね、よかったね」と。それだけでいいのにね。だって、ことばってこだまするから。

金子みすゞ 「こだまでしょうか」は、震災の年にAC公共広告で流れた。

大漁、犬

金子みすゞ「大漁」

金子みすゞ 「犬」

いままでに、心打たれたというか、すごいなと感じたというか、そういう詩を強いてあげてみたら、金子みすゞの詩が圧倒的に多かった。たとえば「大漁」は、常識でありえぬ幅を飛び越える、想像力の豊かさを。「犬」には、意地悪な自分にふとしたことで気付くバツの悪さを。金子みすゞの詩って、どれも深くてやさしい。それは、作者のあたたかなまなざしを感じるからだろうか。

さて、こんな感想を書くと、詩とは情念であると思われるかもしれない。ところが、それ以上に技法(テクネー)である。技法なき詩は、表現の不在。みすゞの詩は拙(つたな)く平易に映るが、そのじつどれも巧(うま)いのである。

これを読んだのはずいぶん前で、そのときもそんなことを思ったのだけど、すっかり忘れてしまっていた。いつ読んでも、やっぱり巧いなあ、と思う。

私と小鳥と鈴と

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みんなちがって、みんないい。ひとりひとりを特徴付け、存在に意味を与える唯一性(かけがえのなさ)というものが、この詩にはある。

要は”かけがえのないあなた”ということ。でも、これを理解するのはちょっと大変。そこには生きるという意味への”問い”が含まれているから。

いったん現実に目をやると競争ばかり。意識していなくとも、つい誰かと比べてしまっている。

かけがえのないあなた、誰とも比べようのない自分。そんなこといきなり他人に言われたって、ばくぜんとした、まるで霞(かすみ)のようで、言われたほうも困惑する。

それもそのはずで、”あなた自身のかけがえのなさ”っていうのは、きっかけは別にして、最後は自分自身で気付くものだからだ。そうして、自分のなかで意識されたとたんに、生きつづけるということに対しての責任の重さがわかってくる。

あとがき

「私と小鳥と鈴と」、いまでも全ては納得できていないのかもしれない。だけども、心のどこかで薄々とわかってる。みんなちがって、みんないい。たしかにそうなのだ。

誰かより優れているとか劣っているとか、そんなことって馬鹿らしいでしょう? なんだかそう、やさしく諭されているよう。

金子みすゞの詩に出会ってからずいぶんと経つ。すごいなあ。ことばって美しいなあ。狭量な自分の心にも、みすゞの詩にはあたたかい眼差しで訴えかけてくるような何かがあるんだよね。

ここで文章を綴ることの意味が、価値がわからなくなることもあるけれど、本を読んでいれば、こんなにも素敵なことばに出会えるってこと、これからも大切に伝えていけたらよいなと思う。



今日も「kakujin」に来てくれてありがとう。いまはそんな思いでいっぱい。初めての方は、ぜひ「オールタイムベスト、とっておきの一冊」から過去の記事も読んでみてくださいね。

オールタイムベスト、とっておきの一冊

「わたしと小鳥とすずと」(金子みすゞ/著、JULA出版局/刊行)は、金子みすゞの詩の中から、これだけは読んでほしい60編を選び、読みやすくあらためてまとめたもの。小学校国語の教科書に採用されている金子みすゞの詩はすべて収録されている。


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