美味しんぼ鼻血描写騒動にみる被曝アレルギーな日本人の存在

    

美味しんぼの鼻血描写問題に揺れる日本。ことの発端は、小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」の人気漫画「美味しんぼ」の第604話に東京電力福島第1原発を訪れた主人公の山岡が、突然鼻血を出す描写があったことだ。

被曝に偏った反応を示すひとたち

それに対しての双葉町の抗議文の内容「福島県産の農産物は買えない、福島方面への旅行は中止したい、などの電話が寄せられており」というくだりに注目したい。なぜ日本人はこうも被曝に対して過敏に、しかも偏って反応するのだろう。たしかに被曝というと”恐ろしい”というイメージしか浮かばない。でも、その恐怖を客観的に説明できる人はほとんどいないのが真実でしょ?

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福島第一原発を発端にした日本人の放射能アレルギーだけど、ほんとうに怖い被曝リスクはなにもフクシマに限ったことじゃない。身近な被曝リスクだってたしかに存在する。だけど、一体どれくらいの人がそのリスクを認識しているのだろう。そして、この問題の論点はどこにあるのだろう。

美味しんぼ 第604話「福島の真実」に描かれた原因不明の鼻血のシーン

Photo:美味しんぼ 第604話「福島の真実」に描かれた原因不明の鼻血のシーン

フクシマより危ないCTスキャン

医療の現場であたりまえとされている、レントゲン、CTスキャン、PET検査、乳房撮影なども放射線の技術が使われている。これだって被曝だ。そのなかでもCTスキャンはほんとうにヤバい。フクシマなんて目じゃないレベルなのをご存知か。職業被曝の年間限度と言われているのが50ミリシーベルト。CTスキャン1回の被曝量は5~30ミリシーベルト。

えっ、これってCTスキャン2回受けるだけで年間50ミリシーベルトの上限を簡単に超える可能性があるってこと?そのことに気付いた方は正しい。

最近の米TIME誌(2012年6月25日号)でも、CTスキャンによる被曝の危険性を取り上げていた。

記事によれば1回のCTスキャンの発ガンリスクは歯のX線を1,400回撮るのに等しい。また飛行機による高度飛行は、宇宙からやってくる放射線に被曝しやすいことが知られているが、1回のCTスキャンの発ガンリスクは5時間飛行の240回分に相当する。同じく空港の全身スキャンを70,000回受けるのに等しく、20本入り1パックのタバコを毎日19年間吸うのと同じだという。

(中略)日本では少々、頭を打ったぐらいで「CTを撮りましょう」と医者から言われるし、患者もそれに応じてしまう。しかも、日本では他の病院で撮ったCTで診察するのを嫌がられる場合が多く、複数の病院でそれぞれCTでや血液検査を受けることが珍しくない。

「日本の論点」(大前研一/著、プレジデント社/刊)

著者は脳腫瘍など深刻な病状が疑われる場合には仕方がないが、軽度な場合、CT検査やPET(陽電子断層撮影装置)検査はよく考えて応じるべきと言っている。人工100万人あたりのCTスキャナの台数は、OECD諸国のなかで日本だけ突出しているというデータがある。他の国々ではCTスキャンのリスクに気づいて導入を抑制しているなかで、日本だけが独走しているおかしな現状がみてとれる。

具体的に数値をあげると、一番多いアメリカでも人工100万人あたりのCTスキャンの台数は40台未満。対して日本は100台に迫る勢いだ。

そもそも、重度と軽度の判断なんて一般人にはつかない。だから、医者の言うことに拒否できる人が果たしてどれくらいいるのだろうかという疑問は残る。リスクを説明されると人間不安になってしまうし、不安になると、良かれと思うことはやろうとするのが人間の性だ。だけど、ある程度の医療知識を備えることで無用な医療措置を防げることだってあるはずだ。医者だって診察しただけで全てはわからないからCTスキャンに頼るのだから。

正しい知識を得ることの大切さは、福島第一原発の風評被害問題や、昨今話題になっている美味しんぼ鼻血描写問題にも言えることだ。



まとめ

結局は、個々のリスクを正しく知って、どれだけ受け入れるかを自分で決めるということが大事なのだ。未来なんて誰にもわからないのだから。「誰かが危ないと言っているから、被曝って怖いイメージ」それだけで判断するのは思考が停止している証拠だろうと思う。そのためにも、知識を得る努力は欠かかさないようにしていきたい。

そもそも、まったくの被曝ゼロ生活ってありえない話なのは、少し調べればわかることだ。もし、放射能を徹底的に避けるならラジウム天然温泉は入れなくなる。海外旅行だって行けない。外に出たら自然放射能に溢れているし、あなたが好きかもしれない韓国旅行だって今後行けなくなる。

韓国、放射能アスファルトを2年間ソウルに放置

今の日本には正しい知識とそれをもとにした安全基準というものが必要だから、いま話し合うべきは、放射能の障害がでる閾値(いきち:反応その他の現象を起こさせるために必要な最小エネルギーの値)、人が許容できる限界被曝量に関する議論だという大前氏の主張が、ぼくには馴染んだ。

日本って過去に原爆を経験した唯一の国で、人体における放射線の影響というデータに関しては豊富に揃っているはずなのだから、それが有効に活用されることを願うだけ。

そう考えると漫画のなかで出てくる井戸川氏(実在の人物)というのは、なんだか胡散臭い。鼻血が出たと自身の画像をネットで公開しているが、客観的な根拠に乏しく、あるのは自分の鼻血がでたという事実だけだ。

こういう、無駄に不安を煽る行為は政治活動における人気取りなのではないかと邪推してしまう。過去の発言もなんだかなぁ…という感想。

【社会】『美味しんぼ』に登場の井戸川元双葉町長 「震災の8日前に政府は地震津波を予知していた」
1 :◆inBhY9Zy5M :2014/05/02(金)10:27:27 ID:nv4OnunzR
(前略)
その井戸川氏、2013年の参院選に「みどりの風」より立候補しているのだが、街頭演説で、
「2011年の3月3日に、地震津波があることを日本政府は知っていた」
と語っている。3・11の8日前、政府や東京電力、東北電力や日本原燃はわかっていたのに発表を止めたのだという。そのときの動画も『Youtube』にはアップされている。

福島県双葉町の元町長・井戸川 克隆 さんの街頭演説 @ 新宿 (1) [ 2013.07.16 ] ? YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kNGH17igez8
(※3:45あたりから)

結局、落選していたようだ。

その他にも漫画の中で前双葉町長井戸川克隆氏が「福島では同じ症状(鼻血が出ている)の人が大勢いますよ。言わないだけです」と発言する内容まである。

風評被害と押さえつけることで自由な議論の場が失われることはあってはならないけど、大人気のグルメ漫画で、こういう問題を扱うことの影響力というものがどんなものか、想像力が欠如していたと思うのだけどね。

この騒動の結果、皮肉にも週間ビックコミックスピリッツは福島県内で売り切れ続出で大人気らしく、入手も困難なんだとか。単行本もAmazonでも2014年5月17日時点で在庫切れ、入荷時期未定となっていました。

美味しんぼ 福島の真実編 (ビッグコミックス)

2006年からプレジデント誌で連載されている「日本のカラクリ」のとりまとめで、著者は大前研一さんです。読みやすくて、面白い。内容がまったく陳腐化していかないのは、日本が変わっていない証拠なんだろうと思う。

  • ケインズ以降のマクロ経済理論はもはや通用しない
  • 新しい「日本のお家芸」を探せ
  • 「ヒット商品」が出ない本当の理由
  • うなぎ上りに膨れ上がる国民医療費
  • 憲法96条は占領軍の最悪の置き土産
  • すべて腹芸と裏ワザで行われてきた外交交渉
  • 福島第一原発事故の本当の原因
  • 知らないと危ない!「世界宗教」の歩き方

大前研一 日本の論点

以上、個人的に刺さる内容でした。福島第一原発事故の原因を論じている項目なんて、大前さんの問題発見能力と解決力に触れることができます。

 事故というのは、物理現象である。物理的な現象である以上、物理的な原因が存在する。物理的にどういうことが起きたのかを説明して、それが起こらないようにするためにはどうすればよいかを示さなければ、事故調査の意味がない。(中略)「想定を超える津波に襲われたから」では答えになっていない。「想定を超える津波に襲われて、何がどうなったか」を分析・検証するのが事故調査である。

(中略)政府の事故調査・検証委員会の最終報告書も読んでいると目が眩んでくる。事故の原因が山のように書いてあるからだ。コンサルタントの世界では、ダメコン(だめなコンサルタント)ほどクライアント企業の問題点を100も200もあげつらう。

たとえば「営業マンの元気がない」という問題に対して、「営業マンの元気がでるプログラムをつくる」といった具合に、問題点をただ逆読みしただけの対策を、これまた100も200も提示するのだ。そんなコンサルティングで会社がよくなるはずがない。問題の原因を突き詰めて、一つの根本的な原因に帰着させなければ、対応策は立てられないのだ。

もっとあるけど、紹介しきれないので興味ある方は手にとってみてください。ビジネスマンに必須な問題発見力と問題解決能力は大きな武器だから、普段からこういう本を読んで武器を磨いておくことをおすすめします。

―関連リンク―

患者は”バカ”だから医療の言いなりになれば良い!?大衆は常に間違う的なその考え、危ないですよ

大前研一 日本の論点


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